さびれゆく夜の街の中で

 今、大阪は全国で沖縄に次いで失業率の高い都市である。完全失業率6〜7%と言われているけども、実質は10人に1人は無職じゃないかとニュースで言っていた。銀行がつぶれる世の中やしねえ。末期的症状やで。

 そんな状況であるからして、夜に飲み歩いて遊ぶ人達も激減した。人通りがほんまに少なくなっている。外にいるのはキャッチの兄ちゃん、姉ちゃんばかり。オレが働いている店もかなり客足が遠のいてお寒い状況だ。この分だと今年がほんまに正念場かな、と。ついに今年から営業時間短縮で給料も減るしオレの生活も絶体絶命だ。それでもミナミはまだましらしい。新地なんかもう終わってるなんて言う人もいるからな。

 ここでやはり説明しとかないかんやろうなあ。うちの店はミナミでも15年以上続いているというなかなかしぶとい店である。お客さんに生バンドで歌ってもらう店で、オーナーがギターを弾いており、みんなから「先生、先生」と慕われている。名物男ですなあ。

客層としては、やはり30代以上が多いかな、お金持ってるし。ほんまにいろんな人が来るよ。個性的な人多いしねえ。大阪ならではの濃さがあるねんな。サラリーマンはもとより、水商売のお姉ちゃん、お兄ちゃん、外人さんにニューハーフ、ヤ○ザも多いし、スポーツ選手やタレント、歌手、ミュージシャンといった有名人も度々来る。

 最近では、西城秀樹夫妻と桑名正博氏も一緒に来てはったね。桑名さんはうちのオーナーと友達やから専属歌手やとも冗談で言うてはったけど。営業時間終わってるのに延々弾き語りは正直かんべんしてほしいなあと思った。(苦笑)

 K-1の石井館長なんかもよく大阪での興業前日にやって来て、ドンペリを何本も空けて帰らはったりね。朝まで飲んでおきながら、次の日のテレビ中継では、しっかりと解説をしてはるという・・・さすがタフやね。ほんでジェントルマンやし。普通、裏方であるオレなんかに気を使ってくれる人って少ないんやけど、館長はわざわざ呼んでくれてドンペリをついでくれはるんよね。この辺が名プロデューサーたるゆえんなんやろうと感じたわ。いっつもキレイなお姉さんも連れてはるし。(笑)

 個人的には格闘技ファンやから、そっち関係の人達を間近に見れたりするのは嬉しかったりする。石井館長がマイク・ベルナルド選手を連れてきたことがあった。彼もバンドやってたりするそうやからベース弾いたんよ。それがズンズンと重い音を出すんだ。確か酒は飲まずにずっと水を飲んでたんじゃないかな。

 あのU.W.F.インターナショナルが新日本プロレスと対抗戦をやろうかという頃に、高田延彦選手が奥さんや和泉修氏らと団体でやって来たりしたこともあった。豪快なイメージがあるが、こっそり店を出て、わざわざビルの下まで降りて吐いているところをたまたまバンドの人に目撃されている。そして何事も無かったかのように戻って行ったらしい。(笑) プロレスラーっていうもんはイメージが大切やからね。

 プロレスラーというと去年、長州力選手のネット限定のファンクラブのイベントがうちの店で行われた。この人も礼儀正しかったね。ちゃんとオレにまで礼をして帰らはったし。あのリング上の殺気ただよう姿とはまた別のナチュラルな顔が見れて良かったねえ。ファンに囲まれて終始ニコやかやった。それでいてサッパリした感じがあったな。オレ仕事忘れて喜んでたわ。(笑)

 後、強烈に覚えているのが、空手の極真会館と正道会館が一緒に飲んでいるという格闘技ファンにしかわからないすごい顔合わせ。佐竹雅昭、角田信朗という選手が、極真空手の元世界チャンピオンの緑健二さんと一緒にいるという。どうやら練習試合か何かの話があったようで、それでお互いこの業界でそれぞれ頑張ろうなんて言って盛り上がってはったわ。失礼な話やけど、最初ごっつい体で顔つきのこわい角刈りの人達が何人も入って来たんで、てっきりあっち側の人かなと思ってしまった。(笑)

 歌がうまかったのは、愛内里菜ちゃんが非常にうまかったね。三回ぐらい来てくれたかな。デビュー時、クラブ・イベントがあった時に寄ってくれたんやけど、最初にTinaの『Magic』やミニー・リパートンの『Lovin' You』、宇多田ヒカルの『First Love』を聴いた時のインパクトは凄かったね。完璧やったんちゃう。ああ久しぶりにええ歌聞かせてもろたわって感じやったもん。今でこそテレビもちょくちょく出てはるけど、まだ誰もチェックしてなかった頃やったからなあ。やっぱりびっくりしたよ、あのしゃべり声と歌の声のギャップに。(笑) テレビ出たらツッコまれるやろうなあと思ってたら案の定やったね。でもナチュラルでええ感じの娘やったよ。オレにわざわざ「ありがとう」って言うて帰ってくれたぐらいやから(こう思うと挨拶って一つの基準やねえ)。

 ギャップと言えば、あの『ミナミの帝王』(誰かわかるよね?)が、萬田はんそのもののキャラクターで、スピッツの『ロビンソン』を歌った時もインパクトあったなあ。えらいドスをきかせながら♪ルララ〜〜って・・・全くスピッツの世界を破壊しとったもんなあ。(笑) まあたいてい永ちゃんを歌わはるんやけど。古本新之輔さんとかと一緒に来てはったっけ。そこまでずっと萬田はんでおらんでもと思った。(笑) それがまた楽しいんやろうねえ。

 大阪やし、吉本関係とかもちょいちょい来はるしね。まあまだまだいろんな人来てるんやけどね。書ききれないわ。中には触れたくもない人もおるし。(苦笑)

 この店に入って気がつけばもう約6年半。自分でもこんなに長く働くとは思ってもいなかったが、その過程でいろんな人に出会えたし、話も出来た。本来自分は厨房とカウンター内担当なので(他の店的に言うとチーフかな?・・・似たようなもんやけど違うけどね)、あまりお客さんと直接話をする機会はない。それでもカウンターにすわったお客さんと話をすることはけっこうあるわけで。それがまた1人で来てはる人が多い。そして1人で来はるお客さんってちょっと変わってる人が多かったりもするねんなあ。(笑)

 面白いわねえ、いろんな人の人生に触れあえて。勿論、相手するのがしんどい人もちょいちょいいるけども。えらそうな人とか、酔っぱらいはやっぱり大変。ヤ○ザでも中には全然イイ人もいるけど(外では知らんが)、おおかたはほんまに気を使うし。だいたいオレほんまは人見知りする方やからねえ。でも仕事やからそんなこと言うてられへんもんなあ。酒入るからどうしても愚痴たれる人とかもいるし、せいぜい聞き上手にならんといかんしね。

 ところで、生バンドってことは人が演奏してるわけやから機械みたいに休みなくっていうわけにはいかない。だから1ステージお一人様1〜2曲ってことになってるんやが、やっぱりそれだけでは物足らずブーブー言う人も多いんや。わがのことばっかりっていう。特に酒が入ってるから気が大きくなってる人も多いし。

 でもそれだけみんなが歌いたがるのは、やっぱりカラオケでは得られない生バンドならではの気持ち良さがあるからなんやね。実際、ここで歌ったらカラオケなんてアホらしいて行かれへんって言ってくれるお客さんも多い(行ってるやろうけどね)。

 あの〜、オレがヴォーカリストやから、さぞこの店で歌ってるんやろうなあと思う人がいたら、それはもう大間違い。自分がたまにマイクを持つことがあるとしたら、それはglobeの曲が出た時のMARCをやるか、Sugar Soul feat. Kenjiの『Garden』が出た時の降谷をやる時だ。後はたまにうちのオーナーがDEEP PURPLEが好きやからってんで『BLACK NIGHT』を歌わされることはあるんやが。それ以外は皆無って言ってもいいかな。お客さんから歌ってよと言われても、断ってるし。何かねえ、仕事気分の中で歌うのって嫌なんよ。それに実は自分のレパートリーがあんまり店に無かったりする。(笑)

 だから自分が歌うのは、ミナミにもう一件あるお友達の生バンドのお店。オイオイ、ライバル店やがな。(笑) こっちのお客さんとかち合うこともあり〜の。まあいろいろと事情があって・・・。そっちにはTM NETWORKの『Get Wild』も入れといてもらったし。

 でも、こっち同様あっちもやっぱ今毎日大変みたいやわ。もろに不況のあおりを喰らっとるからねえ、大阪は。そんな中で日頃のストレスとかを発散させるためにやって来てくれはるわけだ。まあ、少しでも楽しんで帰ってもらえたらね、嬉しいわ。この店を青春の1ページのように感じてくれてはるお客さんも多いし。

 ある意味、この御時世いつつぶれてもおかしくはないけども、自分としてはこの店で随分いろいろな刺激を受けることができたんじゃないかなと思っているし、後悔はしてへんな。まわりには音楽で飯食ってる人達ばっかりおるわけやし。生バンドの演奏を毎日のように聴いてるわけやから、それを皮膚感覚として味わえる職場ってのは貴重だと思う。ただ、このままではいかんのよね。ここでの経験が、今後何かに生かせるようなことが出来ればいいと思ってる。バーテンとか経営者とかそんなんじゃなくて、刺激された感性を使ってという意味でね。

WAY OUT WESTの『INTENSIFY』を聴きながら・・・  

2002.01.26

 

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