ゴーゴー、サムソン!

 

 理不尽大王・冬木弘道が急遽、大腸ガンで引退!!

 「医師からすぐに手術しないと腸閉塞を起こして死んでしまうと言われた」

 びっくりしたな。FMWが倒産して、5.5川崎球場で新団体WEWとして旗揚げ興業をすることが決まっていただけに、あまりにも急な出来事である。

 冬木って全然カッコイイレスラーじゃあない。冬木を見る度にゴダイゴのミッキー吉野を思い出してしまうのはオレだけだろうか?(笑) どちらかというと辛気臭いファイトをする選手っていう印象がある。

 冬木弘道は以前、サムソン冬木というリングネームで、国際プロレスでデビュー。しかし、国際プロレスは倒産し、以下、全日本プロレス→SWS→WAR(ここで改名)→フリー→FMW→WEWという、激動のプロレス人生を歩んできた、ベテランレスラーだ。そのキャラクターも「理不尽大王」と呼ばれ、独特のカラーを持っている。辛気臭いけど、明るく、人をバカにしたことばっかり言うくせに、なぜか憎めないっていう、そんなキャラクター。

 だから大腸ガンで引退って聞いた時は、「またキツいジョークちゃうん?」って思ってしまったんやけど、どうやらマジらしい。

 「今まで散々冗談を言ってきたけど、今度は本当に終わりだから。引退します・・・」その後は、嗚咽で言葉にならず、人前で初めて大粒の涙を見せたのだった。

 4月14日、ディファ有明において、プロレスリング・ノア主催で冬木弘道引退記念試合が行われた。去年の年末には天龍と組んで、世界最強タッグリーグ戦で暴れていた男が、半年もしないうちにノアのリングで引退試合なんて誰が予想したことだろう。

 冬木が全日本を飛び出してからというもの、傍目にはほとんど接点の無いように見えた三沢光晴が、冬木の引退試合をセッティングしたことに、プロレスファンの目からはわからない、友情というものをすごく感じることができた。なんだか嬉しくて仕方がない。

 「俺が勝手に思ってるのかもしれないけども、親友がひとりいた・・・プロレスに入って。「いいよ、いいよ、分かってるよ、冬木さん。いいよ、気にしなくたって」としか言わないけど、また5月5日の川崎でお世話になるけれども・・・本当に俺は返すことはできないだろうけどね、俺はありがとうしか言えない、今はね。ありがとう以外の言葉、何も言えない。今日、来てくれたみんなにありがとう・・・」

 この日、全日本プロレス所属の現・三冠王者である天龍源一郎までもが、ノアの会場まで足を運んだ。しかも、その天龍を車で連れてきたのが、現・GHC王者である小川良成なのだから、びっくりである! 元はといえば、冬木も小川も天龍同盟だったのだから、不思議なことでもないのだが、マット界の現状を見た場合、これは事件だ。

 ただ、天龍は全日本とノアとの間のデリケートな問題を考えて、冬木の引退セレモニーには出ずに、控室で45分間二人きりで昔話に花を咲かせたのだった。この天龍と冬木の関係にしても、単なる師弟関係というわけでもなく、一癖ある関係であって・・・。全日本を飛び出して、SWSからWARと天龍についていった冬木だったが、WARでは天龍やフロントと対立することになり、やがて離脱するという因縁関係にあったのだから。

 天龍「いやあ、昔は面白かったな。あのまま、2人で全日本に残ってたら、何もなかったよな」

 冬木「天龍さんと一緒に出なかったら、こういうレスラーになっていないだろうし、僕は全日本で中堅レスラーで、とっくに終わってますよ、天龍さん」

 それなのに、こうやって努めて明るく振るまいながらの談笑に、なんだか胸が熱くなってしまう。しかも、ノア主催の会場でというところに、同じ釜の飯を食った選手達の心が会社間のしがらみを超えてつながっていると強く感じられるのである。

 この冬木引退記念試合は、三沢が8日に冬木から病名を聞き、即座に14日のディファ有明をなんとか押さえ、ポスター、パンフ、チケットも超特急で作り上げ、できる限りの舞台を作ったのだった。

 冬木弘道引退記念試合6人タッグ60分1本勝負

 冬木弘道、小川良成、三沢光晴VS田上明、井上雅央、菊池毅

 冬木のコールと同時に、リング上は会場からの黄色い紙テープで埋め尽くされた!黄色は冬木のトランクスのカラーだ。この時冬木は泣きそうになったと言う。

 この日の冬木のファイトは、初めての海外修業メキシコ仕込みのダイビング・ボディアタックや、フット・ルース時代のパートナー・川田利明の技であるストレッチ・プラムをパクった冬木スペシャル、そして試合の最後を飾ったおなじみ地団駄ラリアットと、存分に冬木の持ち味を出したレスリングを見せてくれた。

 セレモニーでは、杉作J太郎、邪道・外道、折原昌夫、海野レフェリー、ザ・グレート・カブキ、グレート小鹿社長、神取忍、風間ルミ社長、永田裕志、マイティ井上、ラッシャー木村、秋山凖、ジョー樋口、小橋建太、三沢光晴、愛娘の里花ちゃんと里緒ちゃん、そして最後に薫夫人が夫のレスラー生活の労をねぎらい花束を贈呈したのだった。

 「プロレス生活22年間、最後の10年は本当に自分勝手でわがままな、無茶苦茶な10年間を過ごしてきました。まさか、こんな素晴らしい最後が自分で・・・最後の試合ができるとは思っていませんでした。今日の三沢社長を始めレスラーの方々、スタッフの方々、応援して下さった皆さんのご恩は返すことはできませんが、一生忘れません!これからも、よろしくお願いします!」

 8日に病院でガン告知された後、1時間起きに目が覚めて、ほとんど寝てないという。

 「ガンがあっちこっちに転移して体がだるいよってね・・・ホントは寝てないだけだったのね(苦笑)。まあ病院行けば、もう寝るしかないから、まあいいよ。・・・ちょっと弱いとこ見せちゃったな、寝てないなんて。俺、天龍さんと喋ってた時は、まだ突っ張ってたんだけどな。「強いなあ、お前。そんなこと言われて、よく平気でいられるなあ。俺だったら落ち込んじゃって試合どころじゃないよ」「別にどうってことないですよ」って。フウ(と溜息)。」

 これから手術を受ける冬木の不安が伝わってくる。プロレスラーとはいえ、やはりガンと闘う不安はみんなと同じなんやね。

 プロレスとは、レスラーそれぞれの生き様のぶつかり合いでもある。冬木もそれを見事に体現してきてくれたレスラーだと思うし、個性の強いレスラーだった。「プロレスはハッキリ言っておくけどショーだから!八百長だとは言ってないよ。エンターテインメントなんだから」そう言ってのける冬木は潔かった。

 その後、冬木は4月18日に大腸ガンの手術を受けたが、5月3日の退院予定は微妙な状態だそうだ。それでも、5月5日は病院から外出しても駆けつけるという。

 今後の冬木は裏方に回り、プロデューサーとして活躍する。5月5日の川崎球場は『冬木弘道 引退記念興業〜WEW旗揚げ戦〜』だ。冬木はこの日のメインには因縁関係にあった大仁田厚に託すことにした。大仁田は「もういいよ。体を治してくれ。みんなプロレス仲間なんだから」と、過去を水に流して宿敵と抱き合った。この日から、冬木の新たな挑戦が始まる!

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