AGNUS DEI

 オレが同志社大学の『Lilac Rainbows』(以下ライラック)というサークル内で、1回生の夏合宿時に『ROCK D(スマ<Ba>、オバチャン<Gt>、かっぺ<Dr>)』のヘルプ・ヴォーカリストとして参加したのがきっかけである。その後、バンドの正式名も『AGNUS DEI』に決まり、オレも半年後くらいに正式メンバーとなる。

 最初はDioやOzzy Osbourne、Black Sabbathというハード・ロックのコピーから始まっていたのだが、ギターのオバチャン(男)が、『FLOWER TRAVELLIN' BAND』の「SATORI PART 泪という曲を持ってきて、メンバーに聴かせたところからバンドの方向性が決まった。なんせインパクト抜群だったのである。

 『FLOWER TRAVELLIN' BAND』(以下フラワー)とは、あのジョー山中がヴォーカルで、ギターの石間秀樹、ベースの上月淳、ドラムスの和田ジョージといった面々によるハードロック・バンドだった。感じとしてはLED ZEPPELINとBLACK SABBATHを足して、日本の民族音楽のフィーリングで割ったような曲風。1970年にはカナダに進出し、トロントの人達は日本のミュージシャンといえばすぐ小沢征爾とFLOWER TRAVELLIN' BANDの名を挙げるというほど活躍していた伝説のバンドである。

 こうしてオレ達は、フラワーのカッコイイと思った曲は片っ端からコピーした。こう言うと、いとも簡単にやっていたかのようであるが、とんでもない。だいたい全員バンド初心者だったのだから(厳密に言うと、オバチャンだけちょっとやっておったようだが)。それでもメンバーそれぞれ自分のパートをキッチリこなせる努力は欠かしていなかったので、そういう部分では楽だった。

 そもそもフラワーのコピーはあのジョー山中のツェッペリン級の超ハイトーン・ボイスで歌えるヴォーカリストであるかどうかというところが最大のポイントだった。今思えば、力任せのお粗末な発声ではあったが、声量には絶対的な自信もあったし、また音域も約4オクターヴはカバーできたので、なんとかまあそれなりには形にしていたかな。

 しかし個人的に一番問題となったのはその曲、バンドに合ったキャラクター作りである。元々、オレはこんなDarkな音楽よりもっとPOPでELECTRONICな音楽を志していた。それでも、周りがあまりやっていないようなことという「個性」を発揮できることと、とにかくバンドで演じるということに慣れるという二つの意識によって、「AGNUS DEI」を続けていくことにしたのだった。

 ただ、「日本人相手に何故、英語で歌わねばならんのだ」という思いを抱いて常にやっていたことも事実である。このフラストレーションが後にAGNUS DEI脱退を決意させる要因になるのだが。

 かくして、フラワーのコピーによってライラック内でもひときわ異彩を放ち、あらゆるイベントにも出演するようになったAGNUSだが、所詮はコピーバンド。これでは外のライブハウスも恥ずかしくて出られない。演奏力もついてきたこともあるし、オリジナルにもようやく手をつけ始めることになった。

 だが、どうしてもオリジナルを一から作るとなると時間がかかる。イベントや発表会も矢継ぎ早で、そのための練習に時間が多く割かれ、オリジナル作りは遅々として進まなかった。それでも徐々にオバチャンやスマが考えてきたリフなどを元に、それぞれのパートが合わせつつ、曲を作り上げていき、ようやくオリジナルも出来てきた。

 ・・・が、オレはこの段階でもうAGNUSに見切りをつけることを考え始めていた。それは、先に述べた詞の問題である。オリジナルとなれば当然作詞もしないといけないわけで、これはやはり歌う人間がヴォーカルラインとともに担当せねばならんかった。ここで英詞を強要されたことから冷めてしまったのだ。日本語で歌うのはダサイという意識が根強く充満していたサークルではあったので、致し方なかったりもしたが、伝えることの重要さを知っている自分としては、日本人相手なんだからわかりやすく日本語で歌いたかったし、オレ自身その方が思いも込めやすいと感じていたのだが・・・。(でも確かにロックとかの西洋音楽に言葉をハメるのに、日本語は適してないなあとつくづく思うんやけどね。)

 そんなこんなで、当時2回生にして、サークルの幹部を引き受けていた精神的負担も手伝って、その年いっぱいでAGNUS及び、ライラックをを脱退することを決意した。自分の音楽を模索するために。そのことはライラックの一部の人間には酒の席で来年の事を話そうといった際に正直に打ち明けてはいたが、バンドのメンバーには一切言わなかった。でないと、ただでさえダレつつあったバンドが本当に緊張感が無くなってしまうと思ったからだ。

 オレはその年だけはなんとか「AGNUS DEI」というバンドを完全燃焼させるべく頑張る心構えだった。『拾得』という京都のライブハウスに出た時、たまたま金沢から来ていたお客さんがいて、聞けば『Third Area』というバンドでヴォーカルをしている男の人だった。演奏後、その人がわざわざオレが控えから出てくるのを待っててくれて、いたく衝撃を受けたそうで今後のライブハウスの出演予定なんかを聞いてくれたことがあった。後にTELしてくれたり、なんとわざわざオレんちまで彼のバンドのデモテープを持ってきてくれたりしたもんだ。

 そんなこんなで、京都ミューズホールでの定期演奏会を最後に、『AGNUS DEI』は解散する。そして幾分間は空くのだが、このAGNUSの血は次に組むバンド『アジャンタ』に受け継がれることになるのだった。なお、AGNUSは卒業コンサートでもう一度演奏し、大学生時代の音楽活動の幕を下ろしている。

 ここで参考に、『AGNUS DEI』がどんな曲をコピーしていたか列挙しておこう。そしてさらに、貴重なオリジナル曲に関しても一部紹介しておきたいと思う。

・『HUNGRY FOR HEAVEN』/ Dio

・『LOOKING AT ME, LOOKING AT YOU』/ Ozzy Osbourne

・『OVER THE MOUNTAIN』/ Ozzy Osbourne

・『DIARY OF A MADMAN』/ Ozzy Osbourne

・『IRON MAN』/ Black Sabbath

・『SNOW BLIND』/ Black Sabbath

・『WAR PIGS』/ Black Sabbath

・『SATORI PART 氈x/ Flower Travellin' Band

・『SATORI PART 』/ Flower Travellin' Band

・『SATORI PART 「』/ Flower Travellin' Band

・『AW GIVE ME AIR』/ Flower Travellin' Band

・『KAMIKAZE』/ Flower Travellin' Band

・『HIROSHIMA』/ Flower Travellin' Band

・『SPASMS』/ Flower Travellin' Band

・『HEAVEN AND HELL』/ Flower Travellin' Band

・『SLOWLY BUT SURELY』/ Flower Travellin' Band

 以上が主なコピー曲だが、人前でやらなかったものもあるし、これらの他にもバンド編成上の問題やライブ構成上の問題、あるいはテクニック不足により途中でコピーを断念したものもいくつかあった。

 そしてオリジナルは4曲。少ないけれども出来としてはなかなかイケてるのではないだろうか?テクは別としてバンドの個性は目一杯発揮できていたと思う。上記のFlower Travellin' Bandの曲と併用しつつのライブというのを前提に作られた曲だったので、非常にフラワー色の強いものであるのは確かだが、それでも当時のバンドのレベルを考えれば健闘したと考えたい。特にオバチャン作曲のインド音階チューニングギターによる『SHAMAN』という曲は巷でも好評だった。

・『TORITEKI』 作詞:JIN 作曲:スマ 編曲:AGNUS DEI

 BASSのスマが筒井康隆の短編小説『走る取的』を読んでイメージして作ったという曲。だからオレも小説を読んでそれらしい英詞を考えた。オリジナル1作目ということで、モロにフラワー色が出ている。

『OUTLAW』 作詞:JIN 作曲:オバチャン 編曲:AGNUS DEI

 イントロとエンディングはEL&Pの『TARKUS』を思わせる感じ。AGNUS最初で最後の日本語詞。歌としては最もまともなものだった。雰囲気としては(旧)ルパン三世のエンディングテーマみたいな感じかな。(笑)

・『SERCHING OUT』 作詞:JIN 作曲・編曲:AGNUS DEI

 夏合宿の時に勢いでアッと言う間にできてしまった曲。オリジナル3作目だったが、完成したのは1番早かったので、AGNUSのオリジナル初披露作品となった。今だから言うが、実は英詞が全く考えつかず、その時同時にやっていたYESセッションの『ROUND ABOUT』から歌詞をパチってきた。(笑)

・『SHAMAN』 作曲:オバチャン 編曲:AGNUS DEI

 民族音楽を下敷きにAGNUSの新境地を開いた作品。ただし、歌が無い!! と、言うのもヴォーカルも声を楽器のように使うといことで、「オ〜〜〜〜」としか言ってない。(笑) ラストは(エセ)ホーミーも使ったりしてみた。

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